木星のように、地球から遠く離れた巨大な惑星の質量はどのように求めたらよいのでしょうか?
ここでは、木星と木星の衛星の間に働く力の方程式を立てることで、木星の質量を計算で求めることが可能であることを、示すことにします。
木星の質量の求め方
木星のまわりを回転する衛星上に働く引力と斥力を考えます。
衛星の上では木星からの引力と、木星を飛び出そうとする遠心力が互いに釣り合っているわけだから、
衛星の質量×4π²×衛星の軌道半径/衛星の軌道周期²
=万有引力定数×木星の質量×衛星の質量/衛星の軌道半径²
これを整理すると、
4π²/衛星の軌道周期²=万有引力定数×木星の質量/衛星の軌道半径³
したがって、木星の質量は、
木星の質量=(4π²/万有引力定数)×(衛星の軌道半径³/衛星の軌道周期²)
という式より求めることができることがわかります。
ここで、
万有引力定数=6.6741×10⁻¹¹ m³kg⁻¹s⁻²、π=3.145
また木星の衛星のうち4つのガリレオ衛星について、軌道半径と軌道周期を調べると、
- イオ :直径3,643km 質量8.9×10²²kg 軌道半径 421,700km 軌道周期1.77日
- エウロパ:直径3,122km 質量4.8×10²²kg 軌道半径 671,034km 軌道周期3.55日
- ガニメデ:直径5,262km 質量1.5×10²³kg 軌道半径1,070,412km 軌道周期7.15日
- カリスト:直径4,821km 質量1.1×10²³kg 軌道半径1,882,709km 軌道周期16.69日
この4つの衛星のうちで、一番軌道半径の長いカリストを計算に使うことにして、
カリストの軌道半径=1,882,709km=1.8827×10⁶km=1.8827×10⁹m
カリストの軌道周期=16.69日=16.69×24×3600s=1,442,016s= 1.442×10⁶s
以上の値を木星の質量を求める式に代入すると、
木星の質量
=(4×3.1415²/6.6741×10⁻¹¹)×(1.18827×10⁹)³/(1.442×10⁶)²
=1.898×10²⁷kg
したがって、木星の質量は1.898×10²⁷キログラム という結果が得られます。
まとめ
以上より、木星の質量を求める場合には、木星上を円形の軌道を描いて回っている衛星に働く引力と遠心力を等しいと考えて、運動方程式をたてることで求まることがわかりました。
また、木星の質量を求める式をさらに変形すると、
衛星の軌道半径³
=(木星の質量×万有引力定数/4π²)×衛星の軌道周期²
となることから、この式は、
「惑星の公転周期の2乗は、軌道長半径 の3乗に比例する」
というケプラーの第3法則が、惑星−衛星の関係においても成り立つことを証明していることもわかります。