金星の地表には、地球と同じように、大陸もあれば高い山脈もあり、深い渓谷もあります。
地球上では見ることのできない、奇妙な地形もあります。
ないのは水を満々とたたえた海だけです。
地表が400℃以上の高温なので、これだけはどうしようもありません。
金星の地形のひとつひとつには、それぞれユニークな名前がついています。
金星のそれぞれの地名の由来は?
金星表面には、地球の大陸に似た、大きな高地が3つ存在します。
北半球にはオーストラリアほどの大きさのイシュタル大陸、南半球の赤道付近には南アメリカぐらいの大きさのアフロディテ大陸、そして南極地域にあるラダ大陸です。
この3つの大陸の名前はそれぞれ古代神話の女神の名前からとっています。
イシュタルは古代メソポタミアの愛と美の女神、アフロディテはギリシア神話の愛と美の女神、ラダスラブ(東欧あるいは中欧)の愛の女神です。
イシュタル大陸では、金星で最も高い(高さ11キロメートル)マクスウェル山のあるラクシュミー高原が見つかります。
ラクシュミーはヒンドゥー教の美と豊穣と幸運の女神の名前です。
しかしマクスウェル山はスコットランド人の男性科学者ジェームス・クラーク・マクスウェルにちなんで名付けられています。
女神や実在の女性の名前にあやかった地名が多い金星では、とても珍しいことです。
大陸のほかにも、金星の特徴のある地形には、いろいろな民族の神話や伝説に登場する女性の名前が付けられています。
ギリシア神話からは、アフロディテの他にメティス(知恵の女神)平原、フェーベ地域、ディオーネ地域、レダ平原、ニオベ平原、アルテミス谷です。
このうちメティスは知恵の女神、フェーベ・ディオーネ・ニオベは女神、レダは人間の女性、アルテミスは狩りの女神です。
ローマ神話からはディアナ峡谷があげられます。
ディアナはアルテミスと同じ、狩りと月の女神です。
有名なアーサー王の伝説から王妃グィネヴィア、イヌイットの神話から海の女神のセドナの名前を付けた平原も存在します。
日本の神話や民話に由来するものとしては、ユキオンナ(雪女)モザイク状地形 、ニンギョ(人魚)溶岩流、ウズメ(天鈿女命)溶岩流、ヤガミ(八上比売)溶岩流、セオリツ(瀬織津姫)溶岩円頂丘、イズミ(和泉式部)火口、オタフク(お多福)台地、オトヒメ(浦島太郎の乙姫)台地、などがあります。
金星のクレーターにはさまざまな国の女性の名が付けられています。
日本人に関係がある名前がついているものも、吉岡(吉岡彌生(医師))、千代女(加賀千代女(俳人))、林(林芙美子(小説家))、卑弥呼(伝説の邪馬台国の女王)、市川(市川房枝(政治家))その他、たくさんあります。
峡谷の名前には金星をさまざまな言語で表現したものなどを使っています。
キンセイ(金星)峡谷という峡谷ももちろん存在します。
まとめ
金星の地名には、ひとつのルールがあります。
女神の名前(ウェヌスまたはビーナス)の名前で親しまれている惑星だけあって、いくつかの例外はあるものの、惑星上の地形には世界各国の伝説や民話に登場する女神や女性の登場人物、そして実在の女性の名前をつける、というものです。
惑星には、3人の愛の女神の名前をつけた3つの大陸があります。
金星で最も高い山の名前こそ、例外的に男性の科学者の名前が付いていますが、他のほとんどの地形には女性の名前が用いられています。