木星の表面に規則正しく並んでいる白と茶色の縞模様。
木星の激しい自転やそれによって吹いていると考えられている、東(あるいは西)向きの強風によって、木星の雲が作り上げたものなのです。
そのため東西に吹く風や明るい帯(ゾーン)地帯の上昇気流、さらに暗い縞(ベルト)地帯の下降気流の微妙な変化によって、細かい変化は日々刻々と生じています。
しかしもっと規模の大きな変化、たとえば常に存在している帯(ゾーン)や縞(ベルト)がある日突然に消えたりすることは、起こったことがあるのでしょうか?
実は2010年の春に、木星の「縞消失事件」が起こっているため、その顛末や原因を含めて、ここで紹介したいと考えています。
木星のひとつの縞の消失時の状況と顛末
木星の南赤道縞(SEB)と呼ばれる太い縞(ベルト)が、2010年5月はじめに、消失したことがありました。
当時の木星の写真を確認すると、普段なら赤道の南北にはっきりと暗い茶色の縞(ベルト)が見つかるはずなのに、南側の縞があるはずのところが真っ白な状態になっていて、縞の痕跡は完全になくなっています。
南赤道縞(SEB)とその南となりにある南熱帯(STrZ)の白く明るい帯(ゾーン)の間には、有名な大赤斑が存在しています。
いつもはベルトのバックルのように南赤道縞にしっかりと食い込んで存在している大赤斑が、この時期には南赤道縞が消えて周辺が真っ白になった太い帯の中を、ふわふわと漂っているように見えました。
実はこの南赤道縞、1970年代や1990年代はじめにも一時消失していた時期があり、科学者たちは、今回も再び見えるようになることを確信していました。
そしてその予測は間もなく現実になります。
南赤道縞の一時消失状態は数カ月続きますが、その年の11月には再び縞が観測できるようになって、現在に至っています。
まとめ
なぜ南赤道縞が一時消失したのかという問題について、科学者たちの説明は、はっきりとしていません。
縞消失と縞復活の仕組みがいはっきりしていないからです。
ただ、東西に吹く強い風以外の空気の流れの変化が、縞の消滅と復活をコントロールしているのは間違いないようです。
たとえばNASAによると、普段は赤道縞の周囲に乾いた風が吹いており、高い空にあるアンモニアの白い雲を追い払って、低い空の茶色の部分が見えていたとのことです。
しかし2010年5月ごろに風が止まったことによって、縞を作り出す低空の暗く茶色っぽい部分をおおい隠してしまいました。
そして2010年11月のころに風が復活したことによって、低空の雲が再び現れて縞の復活につながりました。