宇宙開発では、火星への有人飛行計画がいよいよ具体性を帯びて動き出しています。

その将来は、もちろん火星コロニーにつながります。

しかし本当に、火星は人類が地球外へ移住するのに最も適当な場所といえるのでしょうか?

もっと他の場所、たとえば金星の方が、移住に適している、ということはないのでしょうか?

金星への移住が火星より有利な点とは?

金星の環境は、決して移住に有利にはみえません。

地表は摂氏460度で、90気圧もある二酸化炭素の大気が取り巻いています。

しかもそこに達するまでには時速350キロメートルの激しい嵐の吹く上層部や、硫酸の雲を突っ切らなくてはなりません。

これに対して火星の地表は、摂氏マイナス43度という気温で、薄い大気があり、生命の維持に不可欠な水の存在も、かなり前から予測されています。

もし地表にドーム型の建物を立ててその中で暮らすという植民の形だけを考えているのなら、火星の方が、断然住みやすい世界になることは、間違いありません。

しかし金星では、硫酸の雲の上に、地球と温度や気圧が近い空間が広がっています。

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そこに空中都市を構築すれば、寒さの厳しい火星より、はるかに居心地の良い世界を作ることが可能です。

太陽光発電によって、必要な電気を手に入れることもできます。

金星の空中都市には、火星にない3つのメリットがあります。

ひとつは上層の大気によって、人体に有害な太陽の放射線から守られるということです。

もうひとつは金星の重力は地球の0.9倍だ、ということです。地球に近い環境なので、金星に移動しても、身体は違和感がないはずです。

さらに最も大切なことは、地球からの最短距離は4,200万キロメートルで、火星の7,528万キロメートルに比べてはるかに短い、ということがあげられます。

この3つのポイントに対して火星は金星に対して劣った条件しか提供できません。

磁場がないため放射線には直接さらされることになります。

重力が地球に対して0.4倍しかないため、火星で長期間過ごした人(あるいは火星で誕生した人)が地球に戻ってくると、行動に不自由を感じるかもしれません。

地球からの距離が金星の場合より遠いので、地球からの往来に余分な時間がかかります。

まとめ

地表における条件だけを考えると、金星は火星より、人類の移住に圧倒的に不利です。

現在の技術だけで、金星地表の植民地を実現することは不可能です。

しかし金星の上空の硫酸の雲の上の空間には、地球と気温や気圧の似た空間が広がっているので、そこに空中都市を建設して移住することは、十分に可能です。

空中都市の計画が成功すれば、という条件が付きますが、金星はむしろ火星より人類の移住先として条件のよい場所である、ということができます。